
高層難民。
高度な免震・耐震技術を以て新規に建設されゆく超高層マンション。高さは100mを超え、総戸数も200以上にもなる事も多くくなりました。
地震にも強く、駅と隣接して建てられる物件もあり、低層階にはスーパーマーケット、日用雑貨、フィットネス、病院などの施設も入り、暮らしていく上ではとても便利です。
ところが震災時は、超高層が仇となり、建物自体や家財は無事だとしても、避難生活は非常に苦しい思いをするかもしれません。
例えば・・・
50階建て、総戸数550戸の物件があったとしましょう。そこで被災し、電力の供給は停止してエレベーターは動かず、住人は徒歩で1〜50階までの階段を上り下りする事になります。それも1,000〜1,500名が。
高層ビルは一戸建てと違って1階あたりの階段の数は設計上多くなってしまい、1階20段の場合は35階に住む住人は自宅までたどり着くのに700段を踏破する必要があり、50階建てなら1,000段となります。
手ぶらの状態でリズムよく上がれば1階は10秒前後ですが、被災時には重たい水・支援物資を担いで行く事を強いられます。3人家族が飲料水に限って使っても1日6リットル(生命維持に必要とされる量)。調理なども考慮すると10リットル前後。
高層階に住んでいる場合は体力に自信が無いと何十分掛かるか分かりません。たかだか20リットルの水を運ぶだけですが、運搬方法も考えておかないと滅茶苦茶ツライです(大型のディパックに入れて、肩とベルトの間にタオル入れて衝撃を分散・緩衝する等)。
体力の無い高齢者ばかりが住む世帯だと、10〜20kgのポリタンクを毎日自宅へ運ぶ事自体が絶望的になってくるかもしれません。一部地域では、マンション住人数百名を動員してバケツリレーをする取り組みもあるそうですが、実現へは住人間のコミュニケーション構築確立、日々の震災対策について定期的に会議を行い、訓練しておく事が重要となりそうです。

千葉県北西部を震源とする地震、最大震度5強では、約64,000台のエレベーターが止まり、78件の閉じ込め事故が起きました。
復旧へはエレベーター会社のほか消防のレスキュー隊も約30件の救出にあたったそうですが、首都圏直下のような大規模震災では、状況から考えてレスキュー隊は別のタスクに優先され、民間エレベーター会社あたりは業務が完全マヒしているでしょう。
被災時に最寄りの階へ自動停止させるシステムや、緊急地震速報システムと連動させた地震に強いエレベーターもありますが、これらは閉じ込め事故を防止の仕組みです。
最新鋭のエレベーターメンテナンスでは震度5前後までなら自動診断モードでモーター分、制御システム、安全装置、ワイヤー、ドア等の検査を行って仮復旧し、運転再開が出来る場合があります。
が、震度6や7のようなエレベーター自体にダメージが及ぼされると判断された場合は、この機能は動作しませんので何れにしても、最終的には技術者の手が必要となるのです。
首都圏直下のような大規模な震災に見舞われると何十万台もあるエレベーターを技術者が点検するのに、何日掛かるのか・・・。
建物自体が震災を乗り切ってもエレベーター復旧までに1ヶ月掛かったとしたら、毎日何十キロもある荷物を抱えて1ヶ月、登山してるのと同じような状態になります。
もし、設置されているエレベーターのうち1/4が何らかの損傷を受けた場合、住民の輸送能力も1/4減少(或いはそれ以上)する事となり、エレベーターは常に各駅停車状態で長蛇の列。そうなれば避難生活での機動力を奪われ、支援物資の調達も難しくなってきます。
阪神淡路大震災の避難民は約30万人でした。首都圏直下型地震で予測される避難民は300万人以上と桁が違います。輸送方法が限られている中で、支援物資を阪神淡路大震災の10倍近く行き渡らせるのは困難でしょうし、高層階に住む方や、広域避難所から遠方にある地域では備蓄を強化しておく必要が出てくるでしょう。